【 プロデューサー、監督にインタビュー 】 |
インタビューさせていただいたのは、プロデューサーのナモン・ポンウィライさん、監督のノンシー・ニミブット(Nonzee Nimibutr/นนทรีย์
นิมิบุตร)さんです。ノンシー・ニミブット監督はタイ映画界の超大物で、今回の映画祭に来日されたタイ関係のゲストの中では一番の大御所です。
(インタビュアー: 原智子/アジア圏映画探求ライター、長島文雄/(有)アジアネットワーク 協力: 東京国際映画祭) |

ナモン・ポンウィライさん |
実は、このインタビューで非常に印象に残っていることがあります。インタビューの初めに、名刺を渡そうとしたのです。プロデューサーと監督がいらっしゃる場合、通常はプロデューサーから先にお渡しするのが普通だと思います。しかし、今回の場合、プロデューサーは若く、監督はタイ映画界を代表する方です。一瞬、どちらから先に渡したらいいか迷いました。プロデューサーから渡すのが筋であろうと考えそうしようとしたのです。ですが、プロデューサーが受け取れる態勢になっていなかったので、監督からお渡ししようと(大監督なのでプロデューサーより先でもいいであろうと思い)名刺を差し出すと、プロデューサーから先にと手で合図をされました。当たり前のことなのかもしれませんが、さすがだと思いましたね。 |

ノンシー・ニミブット監督 |
◆女性プロデューサー
--失礼ですが、プロデューサーはおいくつなのでしょうか?そして、タイには女性プロデューサーが多いのでしょうか?
[プロデューサー] 29歳です。タイのプロデューサーの多くは、女性なのです。
◆大監督のプロデューサー
--ニミブット監督はものすごい大監督ですが、プロデューサーを務めるのは大変だったのでしょうか?
[プロデューサー] ものすごいプレッシャーでした。ニミブット監督は大監督であるというだけではなく、自身もプロデューサーとして活躍をしていますので余計です。そして、監督は、とてもとても細かい点に厳しいです。
[監督] これまでに、四人の女性プロデューサーを起用してきました。最初の方は病気で亡くなられ、次の二人は厳しさに耐えられず辞めてしまいました。彼女は、四人目ということになります。いつまで耐えられますかねえ?
でも、プロデューサーは女性に限りますよ。なぜかって?もし男性なら、時間が来るとガール・フレンドを食事や映画に連れて行かなければならないじゃないですか。でも、女性なら、ボーイ・フレンドが迎えに来るかもしれません。なら、そのまま仕事が終わるまで待たせておけばいいだけです。そうでしょ?それと、女性の方が男性より忍耐強いと思います。
◆タイ映画界の現状について
--今年、国内でのタイ映画の興行成績が大不振となっていますが、このことについてどう思われていますか?
[監督] 今年のタイ映画全体の興行は、かなりひどいものだと思います。軍によるクーデターがありましたからね。その影響がとても大きいです。今、タイでは、観客層の主力が高校生なのです。そのため、クーデターにより映画を観に行くことができなくなってしまったのです。
また最近では、その高校生が興味を持つような若者世代を描いた作品でないとヒットしなくなっています。たとえば、今年公開されたパンテーワノップ・テーワクン監督の『プレー・カオ(Plae
Kao)』は良質の作品なのですが、ヒットしませんでした。それは、大人の愛を描いたからです。この作品は、もっといい数字が上がってもおかしくない作品なのです。
(※[編集部] クーデターの影響がどれくらいあったかは定かでありませんが、昨年、今年と続くタイ映画界の大不振はクーデターの影響だけではないはずです)
◆監督の過去の作品について
--監督は過去にセンセーショナルな作品を多く撮っていらっしゃいますが、各方面から圧力がかかったりしなかったのでしょうか?
[監督] (ため息の後、笑いながら)ずっと戦ってきました。しかし現在は、レーティング制度(年齢による視聴制限)があるので圧力等はありません。以前は検閲制度があり、問題があるシーンはカットされてしまいました。たとえば、日本でも公開された『ジャンダラ 背徳の情事(Jan
Dara)』<2001年>ですが、合計で8分間削除されています。『オーケー・ベートン(OK Baytong)』<2003年>も、一部が削除されています。
--監督はずっと(圧力と)戦ってこられたのですよね?
[監督] (笑いながら)そうです。
(※「編集部」 答えにくい質問で申し訳ありませんでした。圧力がなかったはずはないのです。監督がどうお答えになるか興味がありましたので、質問させていただきました)
◆『ジャンダラ 背徳の情事』
--この作品では、(肌を見せるシーンがあるので)タイ人女優の引き受け手がなかったために香港人の女優を起用したという話がありますが?
[監督] それは違います。この作品には香港資本が入っています。タイ人女優の受け手はいくらでも)いたのですが、あの作品は海外市場も狙ったもので、それで香港のクリスティー・チョンを起用しました。
(※[編集部] 当時、タイ人女優にも引き受け手がたくさんいたというのはどうでしょうかねえ?)
◆『タイムライン』は『レター 僕を忘れないで』の続編?
--今回の作品は、『レター 僕を忘れないで(The Letter)』<2004年>の続編であるという情報がありますが?
[監督] 今回の作品は単独の作品になっています。実は、最初は続編のつもりで作るつもりだったのですが(監督は『レター 僕を忘れないで』では、プロデューサーを務めている)、だんだんとそうではないような気がしてきました。キャラクターだけをを借りてきて、別の物語としました。ですので、登場人物の名前も微妙に違っています([編集部]そこまで気付きませんでした)。
◆今回の作品で描きたかったことは?
--今回の作品で描こうとしたことは何なのでしょう?
[監督] それは「愛」です。今、タイには愛が足りません。だから、国が二つに分裂し政情不安が起こるのです。またタイ人同士、愛し合いたいという願いが込められています。
[プロデューサー] 最近の人は、遠くにいる人にしか愛しているということを伝うません。なぜ、もっと身近にいる人に対して、愛を伝えないのだろうと思います。
◆キャスティングについて
--キャスティングはどのようにして決めたのでしょうか?
[監督] 主演の二人のことは、ほとんど知りませんでした。オーディションでは、百人以上の人に会っています。その際、主演男優のチラーユ・タンシースックがドアを開けて入って来た時に、オーラを感じました。感じたのは彼一人で、それで彼に決めました。次に決めたのは、彼に合うように母親役のピヤティダー・ウォラムシックでした。次が、主演女優のチャリンポーン・チュンキアットです。彼女を起用したのは、チラーユ・タンシースックとのバランスが取れていないからでした。チラーユは背が高く、チャリンポーンは背が低いです。そして、彼女はスゴイ美人ということではないですが、かわいらしいかったですよね。それに、彼女が何をしても(例えば、夜、海岸でボーイ・フレンドと二人だけで過ごしても)全くセクシーさを感じないですよね。そこが良かったです。ある意味、彼女の役は男を誘い続けていますので、一つ間違えばとてもいやらしい作品になってしまいます。
また、チラーユは当時有名ではありませんでしたが、本作品に出演が決まった一週間後から放送されたTVドラマで人気となり今や大スターです。映画祭に連れて来る時間もないほどです。それと、人気が出る前でしたので、ギャラが安かったので得をしました(笑)。 |
[インタビュー後記]
プロデューサーのナモン・ポンウィライさんは、とにかく美人でした。監督は映画祭のスタッフの某女性が気に入っているようでしたが、その方よりもプロデューサーさんを映画に出演させた方が観客は喜びますよ。絶対に。 |