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タイにおける海賊版DVD事情


海賊版DVD
 海賊版のDVDは、通常は正規版DVDやポスターなどをカラー・コピーした紙が入れられています。右端のものは、性能の悪い機械でコピーしたらしくひどい印刷状態です。

 タイはDVDに関しては、中国と肩を並べてアジアNo1の無法地帯となっています。さすがにキャラクターに関しては中国ほど大胆ではありませんが、DVDに関しては決して引けを取りません。
 そんなタイの海賊版DVD事情の一端をご紹介しましょう。初めて巡り合ったタイの海賊版DVDは、アメリカ映画のものでした。画像はクリアで音声は英語、字幕が英語の他にタイ語、中国語、マレー語があるというすぐれものです。でも、考えてみれば当たり前ですよね。これはタイで売られている正規版のDVDをコピーしたものなのですから。中身は正規版と全く同じです。違うのはジャケット(DVDの入っているケース)くらいです。デジタル媒体というのは恐ろしいものです。品質が劣化せずにコピーできてしまいますので。ちなみに、この手のものはスクムウィット通りやシーロム・ロードの露店で1枚100Bで売っています。

 さて、海賊版のDVDはどこで売られているのでしょうか?スクムウィット通りなど人の多く集まる場所にある露店で売っているのをよく見かけますよね。あと、市場でも売っていますね。タイのすごいところは、比較的有名なショッピング・モールの中でもそれらが売られていることです。しかも、ちゃんと店を構えて売っているのです。ショッピング・モールを回っていると、大規模な正規店ではなく一坪ショップのような小さな店でビニール袋に入ったDVDが束になって置かれている店を見かけたことはありませんか?あれがそうなのです。正規版を安売りしているわけではないのです。つまり、同じショッピング・モール内に、正規版販売店と海賊版販売店とが同居しているのです。
もうひとつ、ショッピング・モール内のお店で正規版販売店と海賊版販売店の中間的なタイプ店があります。まあ、このタイプの店は事実上の海賊版販売店なのですが。ショッピング・モール内に店を構え、間口はそれほど広くありませんが海賊盤専門店のような小さな店ではありません。この種の店は、外から一見すると正規版販売店に見えます。店内に並んでいるのは正規版DVDです。ですが、店内をよ~く見ると、店の一番奥にドアがあるのですね。そして、お客さんたちがそのドアを開けて入っていくではありませんか。それで、恐る恐る中に入ってみると、そこには海賊版のサンプルが並んでいます。この手の店は、バンコクではラチヤダーピセーク通りのショッピング・モールに多いです。

海賊版マスターDVD
 ちょっと見にくいですが、左の海賊版には赤い文字で「MASTER」、右のものには赤い囲みの白文字でタイ語の「マーストゥー(มาสเตอร์)」と記載されています。ちなみに、マスターでないものはタイ語で「チョンローン(ชนโรง)」と記載されています。

 「海賊版DVD」とひとくくりに言っていますが、タイでは大きく分けて二種類のものがあります。まず一つ目は、前述した正規版DVDをコピーしたものです。当然のことながら、中身は全く正規版と同じです。
 さて、もう一つはなんでしょう。ある時、海賊版DVDに「Master」という文字が印刷されているのに気付きました。海賊版なのに「マスター」なの?そんなはずないですよね。DVDケースには入っておらずビニール袋に入れて売られているので、誰もこれが正規版だなんて思いませんよね。実は、この「Master」というのは「正規版」という意味ではなかったのです。これは、「正規版のDVDをコピーしたもの」という意味だったのです。
 では、「マスター」でないものは何なのでしょう?それは、映画館で上映されたものを客席からビデオで撮影したものです。勘違いしないでいただきたいのは、ひと昔前でしたら観客が劇場内にビデオを持ち込んで撮影していました。ですので、前の列に座っている人の頭や途中で席を立つ人の姿が写っていたり、観客の話声が入っていたりしたものです。現在では、その手の人(海賊版製作の関係者)が観客のいない映画館内で海賊盤用にビデオで撮影するのです。この辺の様子が、タイ映画の「カミング・スーン(Coming Soon)」<2008年>に出てきます。
 最初、不思議に思ったのです。映画がまだ劇場で公開中なのに、町中ではその映画の海賊版DVDが売られているのですから。タイでは、早いと劇場公開終了後三カ月ほどでDVDが発売されます。さすがに、劇場公開中にDVDは発売しませんので。
この手の海賊版ですが、映画館内で撮影されていますので画像のクオリティーはよくありません。また、音声もあまりよくないです。そして、ビデオカメラなどの関係で、画面サイズが本当の作品とは違っています。たいてい、左右が切れていることが多いですね。あと当然ながら、このDVDには字幕切り替え機能や特典映像などは付いていません。

 タイで売られている正規版のDVDの値段はさまざまです。定価ですと、新作は300B程度です。通常、新作でも値引きして売られていますので、実質270B程度といったところでしょうか?発売から時間がたつにつれ、だんだんと販売価格は下がってきます。人気のない作品ですと、一年もたてば100B近くまで下がります。それ以上古いものですと、80B程度にまで下がることも多いです。これがVCDですと、30~50B程度となります。
 では、海賊版はいくらなのでしょうか?スクムウィット通りなどの露店で売られている外国映画のDVDは、100Bが普通です。タイ映画は75~80B程度です。ただし、タイ映画は新作しかありません。外国映画もほとんど新作のみですが。ショッピング・モール内の海賊版専門店、正規版+海賊版販売店でも100Bが普通です。これが市場へ行くと3枚で100B程度から1枚70B程度に下がります。内容は、露店やショッピング・モール内で売られているものと同じものです。
 次に、これらの購入時のことについてです。スクムウィット通りなどの露店では、タイ映画を扱う店に関しては商品が並べられていますので、商品をもらって代金を払えばそれで終わりです。市場内の一部の店も同様です。
 外国映画を扱う露店や市場内の一部の店、そしてショッピング・モール内の店では、代金を払うと「5分待て」と言われます。そして店員は店を出てどこかへと姿をくらまし、10分後に品物を持って戻ってきます。そうなのです、店には品物を置いていないのです。店外のどこかに置いてあるようです。屋外の車の中に置いてあるという説もあります。これは警察の取り締まり対策のためですね。

映画「カミング・スーン」
のポスター
新作5本入りの海賊版DVD
 海賊版のDVDは、通常は正規版DVDやポスターなどをカラー・コピーした紙が入れられています。右端のものは、性能の悪い機械でコピーしたらしくひどい印刷状態です。

 海賊版には、なんと新作の映画5本が一枚のDVDに入っているものがあります(値段は、一枚に一本の作品が入っているものと同じ)。いくらDVDでも、一枚に5本も入るのでしょうか?もちろん、普通では入りません。ではどうするのでしょう。広告や特典映像はすべてカットします。そして、VCD並みに画質を落としてありますね。

 さて、海賊版について解説してきましたが、違法性についての議論はちょっと横に置いておくとして、これらのDVDを購入する価値はあるのでしょうか?タイのバンコクにある有名ショッピング・モール内にあるシネコンでは、内外の新作映画の入場料は普通の席で通常140Bです。しかも深夜まで上映されており、最終回の上映開始は深夜0時を回ってからの回もあるほどです。地方都市では、入場料50Bなんて場所もあります(名画座ではありませんよ)。入場料がバカ高い日本ならまた話は別ですが、この条件で海賊版のDVDを購入する利点はあまりないような気もします。もちろん、新作の正規版DVDと比べればかなり安いですが、旧作ならあまり差はありません(ただし、旧作の海賊版は売っていませんが)。特に、いくら安いからといって、劇場内で撮影された画質の悪いものを見たくないですよね。ですが、タイでは海賊版が広く売られています。
 最近では、映画関係者が「海賊版を買うのをやめましょう」と言っているシーンをよく見かけますが、タイ政府が真剣に取り締まっていないので今のままでは海賊版はなくなりません。最後に、蛇足ですが、これらの海賊版を購入して日本帰国時に税関で見つかると・・・となりますのであしからず。えっ?タイで買った海賊版は、リージョン・コードの関係で日本で見ることができるかって?それはですね、海賊版にリージョン・コードは・・・。

[追記]
 今回、海賊版のDVDについて調べるチャンスがありましたので、ちょっと調査してみました。(2011年)

映画「カミング・スーン」Official Traler by GTH
 このトレーラーの中に、海賊版のDVD用にビデオ撮影しているシーンがあるのですが分かりますか?撮影しようとしている男優は、「夏休み ハートはドキドキ!(Hormones)」<2008年>で蒼井そらの相手役をやっていたチャンタウィット・タナセウィーです。


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