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アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017
< Focus on Asia-Fukuoka International Film Festival 2017 >


[開催期間] 2017年9月15日(金)~24日(日)
[会場] キャナルシティ博多、他
[URL] http://www.focus-on-asia.com
 「現在注目を集めている優れたアジア映画を世界に紹介していく」「映画を通して、市民のアジアに対する理解を深める」「映画を通して、市民レベルでの文化交流、国際交流を推進していく」「映画界の新しい才能の発見と育成」を目的とした映画祭。
 日タイ修好130年を記念するタイ映画の特集で、タイ大特集「映画の美味(エビ)でタイを釣る」です。





「頭脳ゲーム」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] 頭脳ゲーム(バッド・ジーニャス)
[英題] Bad Genius
[原題] ฉลาดเกมส์โกง
[製作年] 2017年
[監督] ナッタウット・プーンピリヤ<Nattawut Poonpiriya(Nuttawut Poonpiriya)/นัฐวุฒิ พูนพิริยะ>
[出演者] チュティモン・チュンチャルーンスックイン<ชุติมณฑน์ จึงเจริญสุขยิ่ง(ออกแบบ)>、イサヤー・ホースワン<อิษยา ฮอสุวรรณ(อุ้ม)>、ティーラドン・スパパンピンヨー<ธีรดนย์ ศุภพันธุ์ภิญโญ(เจมส์)>、チャーノン・サンティナタラクン<ชานน สันตินธรกุล(นนท์)>
 ナッタウット・プーンピリヤ監督には、「プレズント・パーフェクト(Present Perfect)」<2014年/ショート・フィルム>、「ザ・ライブラリー ホーン・サムット・ヘーン・ラック(The Library Hong Samut Heng Rak)」<2013年/ショート・フィルム>、「カウントダウン(Countdown)」<2012年>などの作品がある。日本の映画祭で上映された「マリー・イズ・ハッピー(Mary Is Happy, Mary Is Happy)」<2013年>に主演したパッチャヤー・プーンピリヤ(ジューン)<Patcha Poonpiriya/พัชชา พูนพิริยะ>は、監督の妹。原題の「ฉลาดเกมส์โกง」はタイ語の「悪賢い」を意味する「チャラートケームコーン(ฉลาดแกมโกง)」とは綴りが少し違うのだが…。
[「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」HPより]
 超成績優秀な女子高校生リンは、試験で友人を助けたことから、あるビジネスを思い立つ。試験中に彼女が答えを教え、代金をもらうというものだ。さまざまな手段を講じて試験を攻略する学生たち。リンの売り上げも増加する。そして多くの受験生の期待を背に受け、大学進学統一試験というビッグビジネスに挑む。

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「いつか暗くなるときに」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] いつか暗くなるときに
(暗くなるまでには/バイ・ザ・タイム・イット・ゲッツ・ダーク /ダーオ・カノン)
[英題] By the Time It Gets Dark(DAO KHANONG)
[原題] ดาวคะนอง
[製作年] 2016年
[監督] アノチャー・スウィチャーコンポーン<Anocha Suwichakornpong/อโนชา สุวิชากรพงศ์>
[出演者] アピンヤー・サクンチャルーンスック(サーイパーン)<Apinya Sakuljaroensuk(Saiparn)/อภิญญา สกุลเจริญสุข>、アーラク・アモンパシリ(ペー)<Arak Amornsupasiri(Pae)/อารักษ์ อมรศุภศิริ(เป้)>、ธนฉัตร ตุลยฉัตร、ณัฐสิทธิ์ โกฏิมนัสวนิชย์、ペンパック・シリクン(ターイ)<Penpak Sirikul/เพ็ญพักตร์ ศิริกุล(ต่าย)>、サーイ・チャルーンプラ(インティラー・チャルーンプラ)<Trai Charouenpura(Intira Jaroenpura)/ทราย เจริญปุระ(อินทิรา เจริญปุระ)>、アットチャラー・スアン<Atchara Suwan/อัจฉรา สุวรรณ>、Visra Vichit-Vadakan、Rassami Paoluengtong 、Waywiree Ittianunkul、ナットダナイ・ワンシリパイサーン<Natdanai Wangsiripaisarn/ณัฐดนัย วังศิริไพศาล>
 タイ、オランダ、フランス、カタール合作。Electric Eel Films in associationとVS Service and Add Word Productions作品。Electric Eel Films in associationは、日本の映画祭で上映された「チェッカーで(毎回)勝つ方法 (ハウ・トゥー・ウィン・アット・チェッカーズ - エブリ・タイム/How to Win at Checkers - Every Time)」<2015年>、「コンクリートの雲(コンクリート・クラウズ/Concrete Clouds)」<2014年>や「ありふれた話(マンデイン・ヒストリー/Mundane History/Jao Nok Krajok)」<2009年>を製作した会社だ。2016年8月、ロカルノ国際映画祭(Locarno International Film Festival)にてワールド・プレミアが行われた。日本では、第12回大阪アジアン映画祭で上映。
 第26回スパンナホン賞では、作品賞、監督賞、助演男優賞(ナットダナイ・ワンシリパイサーン)、助演女優賞(アピンヤー・サクンチャルーンスック)、脚本賞、編集賞、撮影賞、衣装デザイン賞、主題歌賞、録音賞と10部門にノミネートされた。
 アピンヤー・サクンチャルーンスックは、日本の映画祭で上映された「コンクリートの雲 (コンクリート・クラウズ/Concrete Clouds)」<2014年>、「すご〜い快感 (フィン・スゴイ/フィン・プロジェクト/Fin Sugoi/Fin Project)」<2014年>、「帰り道(アイ・キャリード・ユー・ホーム/パーダン・ベサー/I carried you home/Padang Besar)」<2011年>、「風の音、愛のうた(Loving You, Loving Me)」<2011年>や長崎県の軍艦島で撮影された「Hプロジェクト(ハシマ・プロジェクト/H Project/Hashima Project)」<2013年>などに出演している。
 アーラク・アモンパシリはミュージシャンで、日本の映画祭で上映された「セブン・サムシング(Seven Something)」<2012年>、「ベスト・オブ・タイムズ(Best of Times)」<2009年>やDVD化された「裁断分裂キラー スライス(スライス/Slice)」<2009年>などに出演している。
 ペンパック・シリクンは、日本でも劇場公開された「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える(The Hangover Part Ⅱ)」<2011年/アメリカ>や日本の映画祭でも上映された「愛なんていらない(イット・ゲッツ・ベター/It Gets Better)」<2012年>などに出演している実力派女優。彼女は、セクシー派女優としても有名だ。
 サーイ・チャルーンプラは日本で公開された「THE KING ~アユタヤの勝利と栄光~(King Naresuan Episode 2)」<2007年>、「THE KING 序章 ~アユタヤの若き英雄~(King Naresuan Episode 1)」<2007年>、「ファイターズ・ブルース(Fighter's Bruse)」<2000年/香港>、「ナンナーク(Nang Nak)」<1999年>、「ブロークダウン・パレス(Brokedown Palace)」<1999年/アメリカ>や日本でDVD化されている「ザ・サンクチュアリ(The Sanctuary)」<2009年>、「ビハインド(the Unborn <The Mother>)」<2003年>などにも出演している。
 アノチャー・スウィチャーコンポーン監督には、「ありふれた話(マンデイン・ヒストリー/Mundane History/Jao Nok Krajok)」<2009年>などの作品がある。
[「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」HPより]
 タイのアート系映画を牽引するスウィチャーゴーンポン監督の2作目。ある女性監督が70年代に学生運動家だった女性に脚本のためのインタビュー取材をする。次第に記憶と空間が交錯し、絶妙なコラージュを見せていく…。タイ・アカデミー賞、監督協会賞で作品賞・監督賞などを受賞した刺激あふれる映像詩。

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「明日への戴冠」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] 明日への戴冠(スート)
[英題] The Crown(Terd)
[原題] スート
[製作年] 2016年
[監督] エーカチャイ・シーウィチャイ(エーク)<เอกชัย ศรีวิชัย>
[出演者] エーカチャイ・シーウィチャイ(エーク)<เอกชัย ศรีวิชัย>、ไพศาล แทมมี่、ウィナイ・クライブット<Winai Klaibutr/วินัย ไกรบุตร>、มโนราห์เทพศรัทธา、โนราห์ศรีธน、บอล วงกลม、พงศ์ วงพัทลุง、อัญชลิกา ณ พัทลุง
 ドラマ。俳優のエーカチャイ・シーウィチャイがメガホンを取った、初監督作品。第26回スパンナホン賞では、衣装デザイン賞、主題歌賞にノミネートされた。日本では、「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」で上映。
 ウィナイ・クライブットは、日本で公開された「ナンナーク(Nang Nak)」<1999年>や日本の映画祭で上映された「ランカスカ海戦 パイレーツ・ウォー(Queens of Langkasuka)」<2008年>などに出演している。原題の「スート(เทริด)」とは、「王冠」の意。
[「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」HPより]
 タイ南部で古典舞踊ノーラーの公演を生業とする一座。座長である父親の想いに反して、息子はギターを片時も離さず、舞踊には興味を示さない。議論の末、一座を飛び出した息子はストリートバンドに参加し人気を博す…。タイ南部のゆったりとした美しい風景を舞台に、その伝統的な文化芸術、精神風土を描く。

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「ガス・ステーション」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] ガス・ステーション
[英題] A Gas Station
[原題] ปั๊ม・น้ำ・มัน
[製作年] 2016年
[監督] タンワーリン・スカピシット(コーフ)<Tanwarin Sukkhapisit(Golf)/ธัญญ์วาริน สุขะพิสิษฐ์(กอล์ฟ)>
[出演者] Prama Immanothai<ปั้นจั่น ปรมะ>、アーパー・パーウィライ(メークキーマギー)<Arpa Pawilai(Maggi)/อาภา ภาวิไล(แม็กกี้)>、ペンパック・シリクン(ターイ)<Penpak Sirikul/เพ็ญพักตร์ ศิริกุล(ต่าย)>、หนูจ๋า อชิรญาณ์
 第26回スパンナホン賞では、主演男優賞(Prama Immanothai)、主演女優賞(アーパー・パーウィライ)、助演女優賞(ペンパック・シリクン)、脚本賞、編集賞、主題歌賞にノミネートされ、助演女優賞と脚本賞を獲得した。
 ペンパック・シリクンは、日本で劇場公開された「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える(The Hangover Part Ⅱ)」<2011年/アメリカ>や映画祭で上映された「愛なんていらない (イット・ゲッツ・ベター/It Gets Better)」<2012年>などにも出演している。
 タンワーリン・スカピシット監督には、日本の映画祭で上映された「すご〜い快感(フィン・スゴイ/Fin Sugoi)」<2014年>、「愛なんていらない (イット・ゲッツ・ベター/It Gets Better)」<2012年>や「レッド・ワイン・イン・ザ・ダーク・ナイト(Red wine in the dark Night)」<2015年>、「ロードー・カオ・チョン・ピー(Ror Door Khao Chon Pee)」<2015年>、「ター カオ ラオ ピー(スリーサム/Tha Khao Rao Phi/Threesome)」<2014年>、「タイ・ロム・ユッティタム(Tai Rom Yuttitham)」<2014年>の中の「コン・ディー」、「ハック・ナ サーラカーム(Hug Na Sarakham)」<2011年>、「ターイ・ホーン(Tai Hong)」<2010年>の中の「ソップ・ナイ・テーン・ナム」、「イン・ザ・ネーム・オブ・シン(In the Name of Sin)」<2006年>などの作品がある。原題は、「ガソリン・スタンド」という意味。
[「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」HPより]
 ガソリンスタンドのマンの元には、彼に恋心を抱く女性二人が毎日のように訪れてくる。いつも赤いドレスを纏っている中年女性と毎回異なるコスプレで現れる女子高生。でも彼には忘れられない女性がいた…。無国籍感漂う独特の世界観で魅せるこのラブストーリーは、タイ映画監督協会賞観客賞などを受賞。

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「マリー・イズ・ハッピー」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] マリー・イズ・ハッピー
[英題] Mary Is Happy, Mary Is Happy
[原題]
[製作年] 2013年
[監督] ナワポーン・タムロンラタナリット<Nawapol Thamrongrattanarit/นวพล ธำรงรัตนฤทธิ์>
[出演者] パッチャヤー・プーンピリヤ(ジューン)<Patcha Poonpiriya/พัชชา พูนพิริยะ>、チョンニカーン・ネートチュイ(メイ)<Chonnikan Netjui/ชนนิกานต์ เนตรจุ้ย(เมย์)>、クリサダー・スコソーン(ノーイ)<Krissada Sukosol Clapp(Khridsada Terence/Noi)/กฤษดา สุโกศล แคลปป์(กฤษดา เทอเรนซ์/น้อย)>、プラープダー・ユン(クン)、ワスポン・クリアンプラパーキット(モー)
 ドラマ作品。卒業間際の高校三年生である女の子、マリー(パッチャヤー・プーンピリヤ)とスリ(チョンニカーン・ネートジュイ)。彼女ら二人が中心になり、卒業アルバムを作ることになるが…というストーリー。
 実際にMs. Maryが、Twitterに投稿したものを脚色して映画にしたもの。410通ものツイートが、画面上を次々に飾る。東京国際映画祭のパンフレットによると、「21世紀のニューメディア混合ムービー」だそうだ。たしかに、ツイートを画面に映し出し、そこから映像を展開していく変わったスタイルの作品だ。
 ストーリーの基幹は、主人公である二人の女学生が卒業アルバムを製作するというただそれだけの話だ。しかし、そこに男女の恋愛(タイらしく同性愛も出て来るが)、友情、学校(権力?)との葛藤、事件、ユーモアなどが絡んでくる。
 ドラマ性は薄いのだが、なかなかおもしろい映像タッチだ。ユーモアがところどころに散りばめられているのだが、これがいいセンスをしている。中国製のiPhoneが爆発したり、レッド・ブル(栄養ドリンク。これ、まさかスポンサーではないですよね)が出てきたりと傑作だ。セリフの中に、映画関係のこともよく出てくる。「ウォン・カーウァイ(王家衛)」、「ゴダール」(タイでゴダールは有名なのか?)、「ライフ・オブ・パイ」に「オーメン」(この作品はいくらなんでも若い子はあまり知らないでしょう)などなど。そして、物語展開の主な場所の一つである、線路脇の屋台の名前が「カノム東京(ขนมโตเกียว)」(これ、東京では売っていないがタイでは売っているクレープの一種のこと)。
 作品の前半と後半のタッチが微妙に違うような感じがする。○○が死んだ(この死に方には思わず笑ってしまうが)後からが、少し違ってきている。後半はやや重い感じだ。そのために、作品の長過ぎる感も少し出てきてしまう。この辺が、この作品の弱点かもしれない。ショート・ムービーとして、○○が死んだところでこの作品を終わらせてもよかった気がする。ちなみに、上映時間は125分。
 第23回スパンナホン賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞(パッチャヤー・プーンピリヤ)、助演女優賞(チョンニカーン・ネートチュイ)、脚本賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、音楽賞にノミネートされ、主演女優賞、助演女優賞、編集賞、撮影賞の4部門を獲得した。
 主演のパッチャヤー・プーンピリヤは、「カウントダウン(Countdown)」<2012年>を監督したナッタウット・プーンピリヤ(Nattawut Poonpiriya/นัฐวุฒิ พูนพิริยะ)の妹だそうだ。途中から男性教師役で登場してくるのは、日本で公開された「レベル・サーティーン(13 Beloved)」<2006年>でハエを食べた主演男優のクリサダー・スコソーンだ。第26回東京国際映画祭で上映された。イタリアの第70回ベニス国際映画祭(Venice International Film Festival/2013年)でも上映されている。
 ナワポーン・タムロンラタナリット監督には、「36(36)」<2012年>という作品がある。本作の脚本も担当し、2pmのニックンが映画デビューして話題となった「セブン・サムシング(Seven Something)」<2012年>(この作品の中の「14」を担当)の脚本を共同で担当した人だ。また、「ホーム(Home)」<2012年>の中の第三作目も書いており、「トップ・シークレット 味付のりの億万長者(Top Secret/The Billionaire)」<2011年>、「バンコク・トラフィック・ラブ・ストーリー(Bangkok Traffic Love Story)」<2009年>なども共同執筆している。

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「見えざる者」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] 見えざる者(アンシーアブル)
[英題] The Unseeable
[原題] เป็นชู้กับผี(เปนชู้กับผี)
[製作年] 2006年
[監督] ウィシット・サーサナティアン<Wisit Sasanatieng/วิศิษฏ์ ศาสนเที่ยง>
[出演者] シラパン・ワタナチンダー(ヌン)<Siraphan Wattanajinda/ศิรพันธ์ วัฒนจินดา>、スポーンティップ・チュアンラック(ティップ)<Suporntip Chuang-rangsi/สุพรทิพย์ ช่วงรังษี>、タッサワン・セーニーウォン(ヨー)<Tassawan Seneewongse/ทัศน์วรรณ เสนีย์วงศ์((โย))>
 ホラー作品。時は1930年代。身重の女性ヌアンチャン(シラパン・ワタナチンダー)は、仕事へ行くといって自分の元を去って行ったまま帰って来ない夫を捜し歩いていた。そして、ある屋敷へとやって来たが、夫はいなかった。そこには、謎の夫人ランチュアン(スポーンティップ・チュアンラック)が下働きらと共に住んでいた。ヌアンチャンはその屋敷に受け入れられるが、不気味な出来事が次々に・・・というストーリー。
 ファイブ・スター・プロダクション作品。コメディー的要素が入っていない、純粋なクラッシック風のホラー。ストーリー構成はなかなかおもしろい。そして、この作品の魅力は何よりも映像のノスタルジックさだ。ちょっとセピア色かかった映像は、ホラーの雰囲気も兼ね備えている。物語の舞台となった大きな古い屋敷(セットかロケかは不明)も、雰囲気があっていい。主演のシラパン・ワタナチンダーやスポーンティップ・チュアンラック、タッサワン・セーニーウォンらの登場人物も、当時の古風なスタイルが似合っている。
 作品は冒頭からラストまで、一貫してホラー・ムードを押し通している。この作品は、ホラー以外の何物でもないと主張しているかのようだ。通常のホラーは、何でもない普通の部分と怖さを感じさせるホラー部分を混ぜて物語を展開させる。しかし、ここまで切れ目なくホラー性を出す作品は珍しい。ただ、この作品も、霊の姿自体は怖くない。ごく一部を除いて普通の人間の姿なので。だが、映像のムードだけで怖さを演出しているからすごい。
 主人公の背後から撮影するというカメラ・アングルが多いが、これも怖さを出している一因だ。あとは、人間の背後を霊がさっとよぎるとか、後方の建物の中に霊の姿が見えるとかいつものパターンになっている。ちなみに、作中に「ピー・ポープ」という名前は出てこないが、ピー・ポープという霊(お化け)を扱った作品でもある。
 観客によっては、女主人の素性が説明された時、もしやと気付くかもしれない。しかし、そんなことは、この作品にとって小さなサプライズだ。ストーリーは、ラスト近くまでそれほど大きくは動かない。しかし、最後には三重四重の急展開が観客に押し寄せる。観ている方は圧倒されてしまい、あれよあれよという間にラストへ。作品の冒頭でヌアンチャンが屋敷まで乗ってきたさサムローの車夫に「少しここで待っていてください」と告げ屋敷内へと入って行く。そして、二度と出てくることはなかったので、あの車夫はどうなってしまったのか気にはなっていたが、それが話のラストへとつながっているのが見事だ。あの車夫を待たせたことには、意味があったのだ。
 主演のシラパン・ワタナチンダーがとてもいい。美人ではない?のだが、エキセントリックな顔付きでかわいらしい。そして、作品の雰囲気である懐古的なムードにぴったりだ。古臭いヘア・スタイルも似合っている。彼女は、「シークレット・サンデー(Secret Sunday)」<2010年>で金髪のショート・ヘアーというショッキングの姿で出ていた人である。日本の映画祭で上映された「ディアー・ダーカンダー(親友/ディアー・ダカンダ/Dear Dakanda)」<2005年>の主演女優だ。ランチュアン役の女優スポーンティップ・チュアンラックは、映画出演は本作一本のみ(2014年9月現在)。女中頭のような役を演じていたタッサワン・セーニーウォンは、数多くの出演作がある。映画に限って言うと、本作が10年振りの出演作となった。
 興行収入はUS$527,537なので、可もなく不可もなくといったところ。タイのエンターテイメント・サイトSiam Zoneのユーザー評価では、8.52点(満点は10点。投票数33。2014年6月現在)となっている。
 ウィシット・サーサナティアン監督は、日本で公開された「カメリア(Camellia)」<2010年/韓国、日本、タイ>の中の「アイアン・プッシー(Iron Pussy)」、「シチズン・ドッグ(Citizen Dog)」<2004年>、「怪盗ブラック・タイガー(Tears of The Black Tiger)」<2000年>、日本でDVD化された「レッド・イーグル(Red Eagle)」<2010年>や「サワッディー・バンコク(Sawasdee Bangkok)」<2009年>の中の「サイトシーイング(Sightseeing)」などを手がけている。「見えざる者」という邦題は、2014年のアテネ・フランセ文化センターによる四方田犬彦氏による連続講義「怪奇映画天国アジア」第5回「タイ人が本当に怖いと思うのは、どのような映画か」で上映時に付けられたもの。原題は「霊と不倫する」という意味か?

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「噂の男」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] 噂の男(あの店長/マスター)
[英題] The Master
[原題] The Master
[製作年] 2014年
[監督] ナワポーン・タムロンラタナリット<Nawapol Thamrongrattanarit/นวพล ธำรงรัตนฤทธิ์>
[出演者] ペーンエーク・ラッタナルアン<Pen-ek Ratanaruang/เป็นเอก รัตนเรือง>、ยุทธนา บุญอ้อม、ประวิทย์ แต่งอักษร、คันฉัตร รังษีกาญจน์ส่อง、バンチョン・ピサンタナクーン<Banjong Pisanthanakun/บรรจง ปิสัญธนะกูล>
 ドキュメンタリー作品。映画人により、昔あったある違法コピー・ビデオ店のことについて語っている。バンコクのhouse RCAで上映。第24回スパンナホン賞では、「ドキュメンタリー賞」に輝いている。日本では、第11回大阪アジアン映画祭で上映。
 監督のナワポーン・タムロンラタナリットは、2pmのニックンが映画デビューして話題となった「セブン・サムシング(Seven Something)」<2012年>(この作品の中の「14」)の脚本を共同で担当した人だ。また、「ホーム(Home)」<2012年>の中の第三作目も書いており、「トップ・シークレット 味付のりの億万長者(Top Secret/The Billionaire)」<2011年>、「バンコク・トラフィック・ラブ・ストーリー(Bangkok Traffic Love Story)」<2009年>なども共同執筆している。監督作品としては、日本の映画祭で上映された「36のシーン(36)」<2014年>、「マリー・イズ・ハッピー(Mary Is Happy, Mary Is Happy)」<2013年>などがある。本作は同監督の長編第一作目で、プロデュースと脚本も担当している。

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「サンティとウィーナー」

※「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」より

<上映されるタイ映画>
[邦題] サンティとウィーナー
[英題] Santi-Vina
[原題] สันติ-วีณา
[製作年] 1954年
[監督] タウィー・ナ・バーンチャーン<Thavi Na Bangchang>
[出演者] Poonpan RANGKHAVORN、 Rayvadi SRIWILAI
 タイ初の35mmカラー長編劇映画。フィルムは行方不明となっていたが、2014年にネガ・フィルムが発見された。4Kデジタル技術を駆使し1700時間かけて修復され、2016年に完全版が完成した。
[「アジアフォーカス 福岡国際映画祭 2017」HPより]
 タイ初の35mmカラー長編劇映画という記念碑的作品。長年、上映できる素材が無く鑑賞できなかったが、14年にネガフィルムが発見された。4Kデジタル技術を駆使し1700時間かけ修復、16年に完全版が完成。サンティとウィーナーが紡ぐひたむきな愛と苦悩の物語が、公開当時の全カット、色彩で甦る。
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